歯周病は早期発見が重要 Early detection
歯周病の主な原因は、歯の根元の歯垢や歯石です。虫歯とは異なり、進行しても強い痛みを感じにくいため、歯の動揺(グラつき)に気づいて、慌ててご来院される患者様も多いです。
しかし、その時点ではすでに進行が進んでいることがありますので、注意しなくてはいけません。一般的に言われる「歯槽膿漏」は、歯周病の重度の状態を指しています。大切な歯を失わないためにも、歯周病の進行や適切な対処法をしっかり理解しておきましょう。
こんな症状ありませんか? Symptoms
- 歯磨きをすると歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが腫れている
- 歯がグラついてうまく噛めない
- 歯ぐきから膿がでてくる
- 口の中がネバネバする
- 以前より口臭が強くなった気がする
歯周病の進行 PROGRESS
初期(症状:歯ぐきの発赤、軽い出血)
歯ぐきが感染し始めた状態です。自覚症状はほとんどなく、見た目の変化としては軽い発赤や出血があり、歯磨きの際に毛先に血が付着することもあります。
歯周病は大人の病気と思われがちですが、軽度の歯肉炎は小さいお子様でもなります。歯の根元の磨き残しを防ぎ、歯科医院で定期的なクリーニングを受けることで症状は改善します。中度(症状:歯ぐきの発赤や腫脹、出血、口臭、歯の動揺)
感染が周囲にある歯根膜や歯槽骨にも広がり始めた状態です。初期よりも歯ぐきの腫れや出血が目立つようになり、口臭や歯のグラつきがあらわれる方もいます。
お手入れ方法の改善と歯科医院での定期的な歯石除去に加え、状態によっては歯根に付着した汚れを除去するSRPという処置を受ける必要があります。重症
(症状:歯ぐきが発赤や腫脹、出血、口臭、歯の動揺、排膿)感染が広がって歯槽骨が多く溶かされた状態です。中期よりも歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯の動揺が目立つようになり、歯ぐきから排膿(膿がでること)する方もいます。
歯石除去やSRPをしても改善されないケースでは、外科手術で歯根まわりをきれいにします。外科手術を行っても症状が良くならなかったり、歯の動揺が大きすぎて食事ができなかったりする場合は、やむを得ず抜歯を行うこともあります。
治療の流れ FLOW
カウンセリング・検査
カウンセリングで症状などを伺った後に、歯周検査やレントゲン検査をして歯ぐきや歯槽骨の状態を調べます。歯周病は程度によって治療法が異なるため、検査なしで診断や治療を行うことはできません。
ブラッシング指導・スケーリング(歯石除去)
毎日行うお手入れの質を上げるためのブラッシング指導と、歯に付着した歯垢や歯石を除去するスケーリングを行います。
スケーリングは、歯ぐきの炎症や腫れが酷ければ、それだけ痛みを感じやすく、出血も多くなります。痛みに弱い方は、症状が酷くなる前に受けるようにしましょう。SRP・外科手術(必要な場合にのみ)
歯ぐきの中に歯石が入り込んでいる場合は、SRPという処置が必要です。歯周ポケットが深くて痛みを感じやすい方には、事前に麻酔をすることもあります。
スケーリングやSRPで改善できなければ、外科手術で歯根周囲の感染組織を取り除きます。定期検診
治療後は、歯周病の再発や進行を予防するために定期検診に来ていただきます。トラブルの予防や早期発見に役立ち、クリーニングも行うため清潔な口内環境を維持しやすくなります。
強い痛みを感じにくい歯周病だからこそ、プロによる定期的なチェックが欠かせません。
歯周病と全身疾患の関係について
歯周病の原因菌は血液を通して全身に回り、さまざまなトラブルを引き起こすことが分かっています。歯周病菌が出す毒素によって、血管壁に炎症が起こると動脈硬化につながり、血栓ができるリスクが高まります。
脳梗塞や心筋梗塞の原因となる部位から歯周病菌が検出された例も珍しくありません。歯周病菌は、認知症や糖尿病の発症や悪化の要因とも言われています。
歯ぐきが腫れたときに発生する炎症物質は、陣痛を促進させる働きがあり、歯周病に罹患していると、早産や低体重児出産の可能性が高くなります。
妊娠中はホルモンバランスの変化や、つわりの影響でお手入れが難しくなるため、定期検診や歯科医院でのクリーニングは忘れずに受けるようにしましょう。
歯周病の治療法について
ブラッシング指導
歯の頭をいくら一生懸命磨いても、根元に磨き残しがあれば歯周病を防ぐことはできません。
当院では、患者様の歯並びやお口の状態に合わせて適切な歯ブラシを選択し、毛先の当て方や動かし方まで分かりやすく丁寧にお伝えしております。
フロスや歯間ブラシといった補助用具の使い方もマスターできるので、今まで歯ブラシのみで管理していた方は、より効果を感じられるでしょう。磨く癖を改善することで、清潔なお口の状態を維持しやすくなります。スケーリング
スケーラーと呼ばれる道具を使って硬い歯石を除去する処置です。歯石は歯ブラシの毛先の力では除去できません。特に下顎の前歯の歯と歯の間や、裏側につくことが多く、除去するには歯科医院専用の道具が必要です。
基本的には機械を使いますが、機械では届きにくい部位の歯石を除去する場合や、知覚過敏の症状がある方には、手用のスケーラーを使用することもあります。機械のパワーは調節が可能ですので、しみたり、痛みが強いときは我慢せずにお伝えください。SRP
歯根の歯石除去に加えて、汚れがつきにくくなるよう表面を滑らかにする処置です。歯ぐきの中に入り込んだ歯石は歯根に付着し、見た目も白から赤褐色や黒色に変化します。
歯周ポケットが深ければそれだけ奥に入り込むため、通常のスケーリングでは対応できません。特殊な器具を使って丁寧に除去していきます。症状によっては事前に麻酔をすることもあります。位相差顕微鏡
細菌の動きをリアルに観察できます。歯垢や歯石は細菌の住処ですが、通常菌は目に見えないため、強い症状がでない限り危機感をそこまで感じないという方がほとんどです。
実際にみると治療や予防に対する意識が高くなることから、ご希望の方に細菌の動きを確認いただいております。
歯周外科
フラップ手術 flap surgery
麻酔をして歯ぐきを切り、歯石を目視下で除去する方法です。SRPは、指先の感覚でしか歯石の有無を判断できません。
そのため、取り残しをゼロにするのは難しく、周囲の感染組織が残った状態になることもあります。
フラップ手術をすることで、歯石や感染組織を徹底的に除去でき、歯周病の進行を防ぐことができます。
エムドゲイン emdogain
歯周病によって損なわれた歯根膜や歯槽骨の再生を促進する方法です。歯周組織は自然に回復することはなく、エムドゲインなど特殊な材料を使って再生を促す必要があります。さらにエムドゲインは、歯周病菌の増殖を抑制する効果も期待できます。
予防システム(SPT) Prevention system
SPTとは、歯周治療を受けて安定した状態を保つための定期的な治療や予防のことを指します。歯周病菌は健康な方のお口の中にも存在しますが、歯周病が発症するかどうかはその方の口腔ケアレベルや食生活、喫煙習慣の有無などで変わってきます。
一度歯周病に罹患した方は、そうでない方よりも再発のリスクが高いため、定期的な検査や治療、予防処置が欠かせません。
野中歯科・矯正歯科では、EMSエアフローを用いて、バイオフィルムを徹底的に除去しています。微細なパウダー粒子を歯に噴射して洗浄するため、刺激が少なく、虫歯・歯周病の予防はもちろん、着色汚れの除去にも効果的です。歯周病で歯を失わないためにも、予防を重視した通院を心がけましょう。